クリスマス時期SS2

世間はクリスマス。
赤い衣装を着た人間や、男女が連れ立って右往左往する商店街はいつもより騒がしい。
街に溢れるネオンを恨めしく睨みつけながら、俺こと蒼井悠斗は大きな溜息を吐いた。

「何でよりによってこんな日に……」
「仕方ねーじゃん、マスターの為なんだからさ」

そう答えたのは、俺の後ろからついて来るツンツン頭――もとい、暁宗谷。身に纏う制服は違えど、俺とコイツは友人……いや、悪友といった間柄だ。

「あぁ、だから断らずこうやって集合場所に向かってるだろ。でなければ、誰が好き好んでここにいるか」
「ものの見事にカップルばかりだもんな!」

分かってるじゃないか。
そう突っ込みを入れようかと思ったが、何だか虚しくなったので喉元まで出かかったその言葉を飲み込んだ。コイツに突っ込みは、さほど効果はない。
元々人混み自体は苦手でも何でもないのだが、問題は街の華やかさと喧騒だ。静かな場所を好む俺には、ちょっとキツい。

「なぁなぁ、マスター喜ぶかな?」
「さあな。本当はもっと有用な物を渡すべきだと思うけど……でも」
「マスター様の事ですから、何でも喜ばれるのではないか」

突然、背後から声が降ってきた。
振り返れば、黒い縁の眼鏡をかけたスーツ姿の長身の男が立っていた。
他人と思いそうだが、実は違う。彼も、俺達と同じようにマスターに協力する者だ。
普通に暮らしているならばまず知り合う事もなかっただろう、俺達はただの学生で、彼は何処かに仕える執事だから。
俺の視線に、相手はにっこり笑みを浮かべ応じる。

「……でしょう?」
「あ、荊棘さん。メリークリスマス!」

長身の男――荊棘従道さんに挨拶をする暁。本当に、コイツは何処までもフレンドリーだな。
荊棘さんは流麗な手つきで胸に手を当て、小さく頭を下げた。

「メリークリスマス、蒼井様、暁様。私も丁度向かっていた所です、ご一緒しても構いませんか?」
「はぁ、どうぞ」
「ありがとうございます」
「荊棘さん、今日位スーツじゃなくて良かったんじゃねーの? マスターもそれ位許してくれそうなのに」

おい、敬語何処行った。
暁にそう心の中で突っ込み、溜息を吐く。
だが、荊棘さんはそんな暁の態度にも嫌な顔ひとつせず、微笑みと共に言葉を返す。

「クリスマスと言えど、執事に遊ぶという概念はありませんから。むしろ、仕える主人がクリスマスを盛大に楽しんで頂けるよう、尽力する機会です」
「ふーん……執事って大変なんだな。俺には無理だー、クリスマスって聞いただけでワクワクするもん」
「お前が執事とか、地球が逆回転する位あり得ないから安心しろ。……っと」

話しながら歩いていると、直ぐに目的地に到着した。
何でもマスターに協力する仲間が経営するレストランらしく、今日一日は貸切だそうだ。そんな店の入り口には、既に何人か見覚えのある顔が出揃っていた。
学校帰りらしい紅葉や風間達、少し離れた所に青蓮院さんと村崎もいる。皆、一様にクリスマスを楽しもうと荷物からプレゼントが覗いていた。

「はは、みんな楽しみで仕方ないらしいな!」
「全く……緊張感の欠片もないな」
「蒼井様、そう言わずに。折角のクリスマスです、お楽しみ下さい」
「……そうします」

こちらに気が付いた風間が、俺達を呼んだ。軽く手を上げてそれに応じ、俺達はレストランの方に歩み寄った。

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千里と水樹君出せなかったあああああぁ(((

本当はマスターの指示で集合してクリスマスパーティだったんですが、まさかのセイバー一同からのプレゼントで方向転換しましたw

(最初期のを再録