蒼井悠斗絆シナリオ

蒼井君の親愛会話に文つけただけ
最後やっつけ感すごい

(最初期のを再録)

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永遠の闇と星が広がる空。
俺とマスターは、ただただ言葉を発する事もなくそれを眺めていた。

嫌に眠れない夜だった。
現実世界にも帰れず、命のやり取りを繰り返す日々。慣れない生活を繰り返していれば、不安と焦燥で睡眠もままならなくなる。

そんな状態で寝られる訳もなく、俺はベッドを抜け出し拠点のビルからこっそり抜け出した。荊棘さんがまだ起きていたようだから、静かに、こっそりと。

都会の空よりも広く、暗い。
本来ならば絶好のロケーションで、だがここではその輝きさえも不安要素になる。
少し気を晴らせば眠れるだろう、と警戒だけはして歩を進める。

拠点のビルから五分もしない距離に、公園があった。

ビル群のオアシスのように鎮座するそこは、現実世界の平日の昼間なら子供を連れた人々で賑わう。でも、この世界では公園は沈黙を貫き、錆び付いた遊具が風に鳴らされる。

誰もいない、自分だけが取り残されたような感覚――忘れていたそれに支配されかけた世界に、だけど彼はいた。

「……マスター?」

幾多の棒を組み立てて作られたジャングルジム。その天辺に腰掛け、バランス良く佇むその姿。見紛う事なく、俺を助けてくれた張本人であり――ジュエルマスターだった。

囁くような声だったにも関わらず、彼は俺の声に気が付いてこちらを見た。あれ、と目をぱちくり瞬かせ、ふわ、と微笑む。

「悠斗、起きてたんだ?」
「起きてたんだ、じゃないですよ。危ないですよ、俺達(セイバー)も連れずこんなところで……」
「大丈夫だよ。この辺りは、浄化しちゃったから。――登っておいでよ」

マスターに戦闘能力はない。万が一星喰いにでも遭遇すればひとたまりもないはずなのに、彼はまたへらりと笑い、来い、と手招きする。
ここで、普段なら良いです、と返すのだが――俺は、数秒迷ってその誘いに乗った。

地面より高い世界が目に入る。
公園の樹木が自分より低い位置にあって、ビルがいつもより低くて、空がいつもより近い。両手を伸ばせば届きそうな星の輝きが、俺を見下ろしている。
この世界に来たばかりの時は、ただの恐怖でしかなかったと言うのに――。

「……こんな茶番に付き合えるかって正直思ってたけど、何時の間にか取り込まれちゃったなあ」

ふ、と苦笑じみた呟きを漏らせば、マスターがこちらを振り向いたのが気配で分かった。

コウ――そう名乗ったマスターは、俺達セイバーをまとめる存在。それと同時に、希望の光そのものだ。
ただ不気味に光るだけの星ではない。今、空に浮かぶ星はいつもと同じものなのに怖くないのは――彼が隣にいるからなのかもしれなかった。

俺の呟きに、彼は応じる。

「はは、茶番かぁ。確かに、聞いただけじゃそれ以外の何物でもないよね」

実際、普段の俺ならくだらない、と一蹴するであろう出来事の連続なのだ。

「でも俺は、現状を全部肯定したりしませんからね。……やってることが本当に正しい事なのか、俺はずっと貴方を見てますよ」

隣よりも少し高い位置にある、赤の双眸を見詰める。
そこには、人間の証である『揺らぎ』が存在していた。恐怖、羨望、それ以外の何がそうさせているのかは、分からない。
見られているのが恥ずかしくなり、そっぽを向く。マスターの顔は一瞬しか見れなかったが、何とも形容し難い微妙な表情をしていた、気がする。

だから俺は、明後日を向いたまま付け加えた。

「まあ、ちょっとぐらいは…手伝っても良いですけどね」

一拍置いて聞こえてきた声は、苦笑だった。