山吹と見嶋

「なぁ、言った通りだったろ?」

こんな状況になってもヘラヘラ笑っているこいつに、殺意を抱きそうになる。腰のホルスターに存在する短銃を抜きそうになる衝動を堪えながら、俺は視線を相手に向けた。

「予言屋サンよぉ。こうなる事を知ってたんなら、止めようとか思わなかったの?」
「ヒヒッハハ! 勘違いすんなよ、俺は《予言屋》じゃない。《覗き屋》だぜ」
「……そうだったな」
「俺はただ、数ある運命のその先をこの目で見てみたかっただけ。まぁ、マスターちゃんが築く世界も見たかったが――こりゃ仕方ねぇなぁ」

パァン!

その台詞が言下する直前、俺は抑えていたはずの衝動のままにホルスターから短銃を抜き、見嶋に向け発砲していた。奴はそれに気が付いていたらしく、銃弾を避けにやにやと不快な笑みを顔に貼り付けたまま言った。

「なぁんだ、お前も人間じゃねぇの。イイ顔してるぜ、今のお前」
「……俺さ。職業柄、大抵の人間は乗って受け流すだけの器量はあるって自負してたんだぜ。でも、見嶋――お前だけは無理だ」

引き金に力を込める。

「願いなんざどうでもいいよ。俺は――お前を倒すためだけに、今ここにいるっ!!!」

変わる事を予見していながら、何もしなかった見嶋を倒す。
もう戻れない、奇妙で楽しくもあった
日々への弔いだ――そう正当化する自分を今は忘れ、俺は自分の怒り全てを銃弾に込めた。