赤と青

「暁!」
「おぉ、悠斗!? 何お前までこっち来てんだよ!?」
「お前が馬鹿やってるからだろ! 全く、お陰で作戦が台無しだ……!」

言いながら、悠斗が剣を構える。

気が付けば、周囲には星喰いの群れ。ここから生還するには、道を切り拓くしかない。

じわじわと狭まって行く包囲網。
自然と後退するしかなくなり、同じように動いていたらしい悠斗と背中がぶつかる。
命の危険が迫っていると言うのに、背後に誰かがいる――それが限りなく心強い。一人でいれば、幾らオレでも不安で仕方なかっただろう。

「良いか、暁。お前は直ぐ前に出過ぎるから、俺が合わせてやる。――好きに暴れろ!」
「へ、最初からそのつもりだぜ!」

パァン、とグローブを嵌めた両手を鳴らし、標的を見据え動く。

一体、二体、三体。力を載せたストレートは星喰いの黒い体を呆気なく崩壊させる。
右の視界に、また別の星喰いが入り込んだ。今から動いても、確実に爪の一撃を貰う距離だ。
しかしその爪は、オレを傷付けるに至らない。

「――やぁっ!」

剣の煌めき。
星喰いを斬った勢いそのままに、悠斗がその星喰いを斬り払う。返して、逆方向から自身に向かってきた相手に一撃。
オレも同時に、悠斗の視界に入らない位置から襲ってくる星喰いを優先的に屠る。カバーしきれず、頬に一筋の赤が生まれた。

「うおおおぉあ!」

だがそれに怯む事はしない。怯めば最後、オレだけでなく悠斗にも危険が及ぶ。
体重を載せた拳を、星喰いの腹に叩き入れた。

おおよそ生き物とは思えぬ悲鳴を上げ、星喰いが一体、また一体と消え瘴気と一体化していく。
数は大方減った――そう思い、悠斗に声をかけようとした。

その時、オレは見た。
オレ達だけに視線を定め、ニタリと気持ち悪い笑みを浮かべた、何かを。

「――馬鹿、右!!」
「へ、――うおぁっ!」

痛恨の一撃。
隙を見せてしまったオレの視界に星喰いが入った時には既に遅く、星喰いの攻撃が体を襲った。
地面に叩きつけられ、衝撃で骨が軋む。三半規管が揺さぶられたせいで、目の前もぼんやりとしていた。

「大丈夫か、暁!」
「わ、悪ィ……」
「戦闘中によそ見するからだ! 三分稼いでやるから、じっとしてろ!」

オレはカップラーメンか、とボケたかったが、今そんな場合でないのは重々承知の上。
現に、稼いでやると言ったものの、悠斗だってかなり体力を消耗している。最初は見切っていた単調な攻撃を、受けてしまう事が多くなっていた。

周囲を見回す。視界のブレは少なく、衝撃も薄れている。
よし、と立ち上がり、オレも残る星喰いの処理に戻った。