【銀魂】動乱

「……何かおかしいとは思ってたけど、まさか妖刀に魂喰われてたなんてな」

思わず銀のように頭を掻き、大きく溜息を吐いた。

私は追い出されたトシの様子が着になり、直ぐさま明日の有休を取って(今日は元々非番だ!)彼の行方を捜していた。そしたら何の因果か銀と一緒に行動していて、お前らやっぱり仲良いんじゃねーの?と思わず一人ごちた。

「おー、元の人格はひょっとしたら帰って来れねぇかもって言ってたぜ」
「……はー……妖刀に関わるとロクな事になりゃしない」
「同意。にしても、真選組で何があった? パトカーうっせぇ」
「あぁ、実は……」

私が銀の問いに答えようとした瞬間、まるでそれを遮るかのようにすぐ横にパトカーが停まる。中から隊士が出て来て、焦った様子で叫んできた。

「副長、スオウさん! こちらにおられましたか、大変です!」
「どうした」
「山崎がやられました! 屯所では大変な騒ぎです、副長も一緒に早く帰還して下さい!」
「――!」

退が……?
彼の実力は知っている。知っているからこそ、その知らせが信じられなかった。
だが、そうも言っていられないのも事実。この隊士達……。

隊士の一人がトシの腕を掴み、早くとせがむ。チラっと銀を一瞥すると、私と同じ何かに気が付いているのか珍しく眉間にシワを寄せていた。
そして、その嫌な予感程当たるものはない。

「――万事屋!」
「ったく、面倒事は御免だぜ!」

副長であるトシに向けて刀を向け飛びかかる隊士達に、私はそれよりも早く動いた。刀を持つ腕を取り敢えず使用不可にし、ついでに足払いをかけ転倒させる。
銀は呆然とするトシの襟首を掴み、退路を確保。新八君と神楽がそれを援護する。

「スオウ!」
「あぁ」

深追いせずに、名を呼ぶ銀の元へ駆ける。副長達を逃すな、と言う隊士の声が耳に届いたが、今は逃げるのが先だ。

「どーいう事だアレエェ!!」
「何で真選組が土方さんを……!?」
「銀! 前方から車!」

訳も分からぬまま路地裏を走ると、大通りに出る所でパトカーに塞がれる。驚く事に、トシや私以外の一般人がいるにも関わらず真っ直ぐ突っ込んできた。
それを神楽が止め、銀が運転席に座っていた隊士を伸す。ちなみにトシがぎゃーぎゃー五月蝿いので、私が一発殴って黙らせた。

奪ったパトカーに乗り込み追っ手を振り切ると、銀が無線を使って状況把握を試みる。
内容は、局長である近藤と副長のトシ、そして何故か私を暗殺せよ、という事だった。やはり、この一件は伊東の仕業か……。

「オメーどうすんだ? 暗殺対象になっちゃってるけど」
「私が簡単にやられるとでも?」
「それはない。ただ、オメーにとっちゃ真選組は守るべき対象なのか?」
「当たり前だ」

確かに、私は正直に言うと真選組自体がどうなろうと構いやしない。局長や総悟には悪いけども。
ただ、トシには恩がある。攘夷活動で傷付いた私を助けてくれたのは、間違いなくトシなのだ。
その彼が真選組を守ってくれと願ったのなら、私はそれに従うつもりだった。
……数年前までの私なら、絶対にやらない事であるのは自覚済だ。

銀は「お前頑固だもんなぁ」と苦笑すると、ハンドルを動かした。
向かう先は、局長が乗る列車だ。

いざ出陣の時
「あ、その前に屯所寄ってくれ」
「そんな暇……」
「隊服の方が良いだろ」
「あ、成程」