スウォア死亡ルート

「どいつもこいつも……私を怒らせた事、後悔なさい!!!」

叫ぶと同時に向けられた殺意が爆発し、先程出来た地面の亀裂――彼女の足元から更に敵が現れた。真っ黒の体に赤い目のラルウァが、六体。
一同を囲むようにして現れたそいつは、ふしゅーと空気の抜ける音を出すと大きな手をこちらに動かしてくる。

「ラルウァがこんなに……!?」
「おいおい冗談じゃねーぞ!? ヤバくねーか」
「流石にこの数は、厳しいな」

ラルウァを倒せる力を持つのは、クーザンとクロス、ユーサだけ。その倍の敵の数に、全員が冷汗を浮かべる。

「スウォア、しっかりして! スウォア!」
「……泣いてんじゃねーよ、アホ……。それと、治癒魔法使っても俺にはもう効かねーよ……」

顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、アークが両手をスウォアの傷口に当て魔法を使おうとした。それを先回りして止めさせ、彼は息を吐いた。

「……アラナンから北西にある、海に突き出した崖……そこに、俺らの親の墓はある……。行ってやれ……」
「バカ、キミも一緒に来てよ! 諦めちゃダメだよ……!」
「悪ぃ、無理な相談だ……もう、腕も動かねーんだよ……ハハ、あの女……毒を仕込んでやがる……」

そこで、スウォアは数回咳き込んだ。吐き出した液体は赤く、しかも尋常な量ではない。真っ白だった衣服は、もう半分以上が赤に染まっていた。

「……俺は、お前に復讐する気は……なかった……」
「……え……」
「俺は、ただ……お前に……会いたかったんだ……。俺がいなくなったら、アイツは……どうなるんだって……必死でそう足掻いてたら、何時の間にか……こんな身体になってた……」

何時ものふてぶてしい口調に、最早力は残ってなかった。戦闘の時爛々と輝く瞳も、徐々にその光を小さくしていく。

「生きろよ、スウォア……俺からの、最初で最後の餞別だ……」

そう言うと、スウォアは震える手で自身の武器であり、刺された時に手放してしまったレイピアを指し示す。
サエリがそれを拾い、黙ってアークに渡した。
それを見届けて満足したのか、彼はもう完全に目を閉じる。

「アーク……! アークっ!」
「……すまなか、った……」

最期の謝罪を口にし、そしてーー彼は、腕を地面に落とした。

そこから、光が発生しスウォアの身体を包むように発光させる。ラルウァが消滅する時と、同じ現象だ。

「……ホント、アンタって馬鹿な奴ね」

サエリの呟きが、静かに耳に入ってくる。
アークは最後まで、ぞっとするほど冷たくなった彼の身体を抱えていたがーーやがて、その感触すら消え去っていった。